エンディングノートの書き方|書く項目一覧と5ステップ・記入例

「エンディングノートを書こう」と思い立っても、いざノートを開くと「何を、どう書けばいいのか」で手が止まってしまう方は少なくありません。市販のノートやアプリには項目があらかじめ用意されているものの、空欄が多すぎて途中で挫折してしまうケースもよく聞かれます。
この記事では、エンディングノートに書くべき項目を分野別に網羅した一覧と、迷わず書き進められる5つのステップ、そして実際の記入例までをまとめました。Death Tech Japanらしく、スマホ・SNS・サブスクといった「デジタル終活」の項目も厚めに解説します。読み終えるころには、今日からどこを埋めればよいかが具体的にイメージできるはずです。
なお、エンディングノートには法的効力がありません。財産の分け方を法的に確実に残したい場合は遺言書が必要です。この違いは記事の後半で正確に整理しますので、まずは「自分や家族のために何を書き残すか」から見ていきましょう。
エンディングノートとは|まず役割を正しく理解する
エンディングノートとは、自分にもしものことがあったとき、家族や周囲の人が困らないように、必要な情報や自分の希望を書き残しておくノートです。決まった書式はなく、何を書いても自由で、いつでも書き直せます。終活の入り口として最も取り組みやすいツールといえます。
大きな役割は次の3つです。
- 情報を残す:銀行口座・保険・不動産・契約サービスなど、家族が探すのに苦労する情報の在りかを一冊にまとめる。
- 希望を伝える:延命治療や介護、葬儀・お墓について、自分の意思を言葉にして残す。
- 気持ちを届ける:家族や友人へのメッセージなど、面と向かっては言いにくい想いを書き留める。
エンディングノートは「亡くなったとき」だけでなく、認知症や事故などで自分の意思を伝えられなくなったときにも役立ちます。終活全体の流れや他の準備との位置づけを知りたい方は、終活カテゴリの記事もあわせてご覧ください。
エンディングノートに書く項目一覧【分野別】
まずは全体像です。エンディングノートに書く項目を9つの分野に分けて整理しました。最初からすべてを埋める必要はありません。書ける項目から手をつけ、空欄は後日埋めれば十分です。
1. 自分の基本情報
本人を特定し、各種手続きの起点となる情報です。家族でも意外と正確には把握していないことが多い分野です。
- 氏名(旧姓を含む)・生年月日・本籍地・現住所
- マイナンバー・運転免許証・健康保険証・パスポートの番号と保管場所
- 血液型・持病・アレルギー・かかりつけ医
- 家系・親族関係の覚え書き
2. 資産・銀行口座・保険
家族が最も知りたいのに、最も探しにくいのがお金まわりの情報です。残高そのものより「どこに何があるか」を残すことが重要です。
- 銀行・ゆうちょの口座(金融機関名・支店・口座番号・用途)。通帳とキャッシュカードの保管場所
- 証券口座・投資信託・iDeCo・NISAなどの金融資産
- 生命保険・医療保険・火災保険(保険会社名・証券番号・受取人)
- クレジットカード(カード会社名・連絡先)と引き落とし口座
- 借入金・ローン・保証債務などのマイナスの財産
暗証番号やパスワードは、ノートにそのまま書かないでください。盗難・紛失時の情報漏えいリスクが大きいためです(書き方は後述します)。生前に口座や持ち物を整理しておきたい方は、生前整理の記事も参考になります。
3. 不動産
- 土地・建物の所在地・地番・面積・名義人
- 権利証(登記識別情報)・固定資産税の納税通知書の保管場所
- 住宅ローンの残高・抵当権の有無
- 賃貸契約(借りている・貸している場合の契約内容と連絡先)
4. デジタル終活(スマホ・SNS・サブスク)
Death Tech Japanがとくに重視している分野です。今や資産も思い出も連絡先も、その多くがスマホやネットの中にあります。本人しかロックを解除できず、家族がアカウントの存在すら知らないと、解約も削除もできないまま放置される「デジタル遺品」が生まれます。次の項目を必ず書き残してください。
- スマホ・パソコン:本体の解除方法のヒント、機種、契約しているキャリア。家族に「中を見て解約してほしい」のか「見ずに処分してほしい」のかの希望
- SNSアカウント:X(旧Twitter)・Instagram・Facebook・LINEなどのID。各アカウントを「削除してほしい」「追悼アカウントにしてほしい」「そのまま残してほしい」の希望
- ネット銀行・ネット証券・電子マネー・暗号資産:通帳が手元にないため、存在自体を書き残さないと家族が気づけません
- サブスク(定額サービス):動画・音楽配信、クラウドストレージ、アプリの課金、定期購入など。解約しないと料金が引き落とされ続け、遺族の金銭的負担になります
- メールアドレス:各種サービスの登録元になっているため、整理の起点として重要です
- 写真・データの扱い:クラウドやスマホ内の写真・動画を「残してほしい」「見ずに消してほしい」の希望
サブスクは見落としやすく、遺族トラブルの原因になりがちです。国民生活センターも、家族がデジタル遺品を把握できずに料金の引き落としや解約で困る事例に注意を呼びかけています。デジタル遺品の整理方法をくわしく知りたい方は、デジタル遺品の記事をご覧ください。
5. 医療・介護の希望
自分の意思を伝えられなくなったときに、家族が判断に迷わないための項目です。
- 病名や余命の告知を「してほしい」「してほしくない」
- 延命治療・人工呼吸器・胃ろうなどへの希望
- 最期を迎えたい場所(自宅・病院・施設)
- 介護が必要になったときの希望(在宅・施設・誰に頼みたいか)と費用の考え方
- 臓器提供・献体の意思
6. 葬儀・お墓の希望
- 葬儀の規模・形式(一般葬・家族葬・直葬など)と宗教・宗派
- 葬儀社の希望や、生前契約・互助会の有無
- 遺影に使ってほしい写真の場所
- お墓・納骨・散骨・樹木葬などの希望、墓地の場所や承継者
- 訃報を知らせてほしい人・知らせなくてよい人
7. 家族・友人への連絡先とメッセージ
- もしものときに連絡してほしい親族・友人・知人の名前と連絡先、続柄や関係
- 勤務先・所属団体・町内会などへの連絡先
- 家族や大切な人へのメッセージ・感謝の言葉
8. ペットのこと
- ペットの名前・種類・生年月日・かかりつけの動物病院
- 食事・薬・性格などの世話に必要な情報
- 自分にもしものことがあったときに世話を託したい相手
9. 相続・遺言に関すること
- 遺言書の有無と保管場所(自筆証書遺言・公正証書遺言など)
- 相続について相談している専門家(弁護士・税理士・行政書士など)の連絡先
- 財産の分け方についての希望や考え方(※これ自体に法的効力はありません)
財産の分け方を法的に確実に残したい場合は、エンディングノートではなく遺言書が必要です。両者の違いは次章で整理します。
エンディングノートの書き方【5ステップ】
項目がわかっても、いきなり全部は書けません。次の5ステップで進めると、無理なく書き上げられます。
ステップ1:ノートやアプリを用意する
市販のエンディングノート、無料のフォーマット、終活アプリ、または使い慣れた大学ノートのいずれでも構いません。決まった書式はないので、続けやすいものを選ぶことが第一です。手書きが負担なら、項目が用意された市販ノートやアプリが書きやすいでしょう。
ステップ2:書きやすい項目から埋める
最初から順番に書く必要はありません。基本情報や連絡先など、すぐ書ける事実情報から手をつけましょう。医療や葬儀の希望のように考える時間がいる項目は後回しでかまいません。「完璧に書く」より「書き始める」ことが大切です。
ステップ3:希望や気持ちを言葉にする
事実情報が埋まったら、医療・介護・葬儀・お墓の希望や、家族へのメッセージを書き加えます。迷うときは「家族が判断に困らないように」という視点で考えると、書く内容が定まりやすくなります。
ステップ4:パスワードは「ヒント形式」で残す
銀行・カード・スマホ・SNSの暗証番号やパスワードを、そのまま書くのは避けてください。盗難・紛失時に悪用される危険があります。家族だけがわかる「ヒント形式」(例:「いつもの番号」「長女の誕生日」)で記録するか、パスワード管理ツールの存在と解除方法だけを伝える方法が安全です。デジタル終活で最も注意したいポイントです。
ステップ5:保管場所を家族に伝え、定期的に見直す
書き上げても、存在を知られなければ役に立ちません。信頼できる家族に「ノートがあること」と「保管場所」を伝えておきましょう。引き出しや金庫など、家族が見つけやすく、かつ第三者の目に触れにくい場所が適しています。口座やサービスは変わるため、年に1回は内容を見直すと安心です。
エンディングノートの記入例
具体的なイメージがわくよう、いくつかの項目の記入例を挙げます。短く・具体的に書くのがコツです。
- 銀行口座:「〇〇銀行 △△支店 普通/生活費用。通帳とカードはリビングの引き出し上段。暗証番号は『いつもの4桁』」
- サブスク:「動画配信サービス(月額制)に加入中。私が亡くなったら解約してください。登録メールは下記アドレス」
- SNS:「Instagramのアカウントは削除してほしい。Facebookは追悼アカウントにしてほしい」
- 医療の希望:「回復の見込みがない場合、延命のための人工呼吸器は希望しません。最期はできれば自宅で過ごしたい」
- 葬儀:「家族葬を希望。宗派は〇〇宗。遺影はパソコンの『写真』フォルダの旅行写真を使ってほしい」
- 家族へのメッセージ:「長い間支えてくれてありがとう。あなたたちの人生を大切に生きてください」
注意点|エンディングノートに法的効力はない(遺言書との違い)
最も大切な注意点です。エンディングノートには法的効力がありません。これは、民法が定める遺言の方式を満たしていないためです。したがって、エンディングノートに「財産は長男に多く渡す」と書いても、その記載どおりに相続させる法的な力はありません。
一方、遺言書は、民法で定められた方式(主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)に従って作成すれば、財産の分け方などについて法的効力を持ちます。両者の違いを整理すると次のとおりです。
- エンディングノート:書式自由・いつでも書き直せる・幅広い情報や希望を残せる/法的効力なし。財産分配を強制できない
- 遺言書:民法の方式に従う必要がある・主に財産の配分を定める/法的効力あり
つまり、両者は対立するものではなく役割が異なります。気持ちや情報・希望はエンディングノートに、財産の分け方を確実に残したいことは遺言書に——と使い分け、併用するのが理想です。遺言書の方式や効力についてくわしくは、遺言カテゴリの記事をご確認ください。
そのほか、次の点にも注意しましょう。
- パスワード・暗証番号をそのまま書かない(ヒント形式にする)
- 保管場所は家族に伝えつつ、第三者に見られにくい場所を選ぶ
- 口座やサブスクは変わるので、定期的に見直す
よくある質問
Q. エンディングノートに法的効力はありますか?
A. ありません。民法が定める遺言の方式を満たしていないためです。財産の分け方を法的に確実に残したい場合は、遺言書を別途作成する必要があります。エンディングノートは情報や希望、気持ちを伝えるためのものと位置づけてください。
Q. いつから書き始めればよいですか?
A. 思い立ったときがはじめどきです。年齢や健康状態に関係なく、書ける項目から始められます。事故や急な病気はいつ起こるかわからないため、元気なうちに基本情報や連絡先だけでも書いておくと安心です。
Q. パスワードはどう書けばよいですか?
A. そのまま書くのは避け、家族だけがわかる「ヒント形式」で残すのが安全です(例:「いつもの番号」「結婚記念日」)。盗難・紛失時の悪用を防ぐためです。パスワード管理ツールを使っている場合は、その存在と解除方法だけを伝える方法もあります。
Q. スマホやSNSのことは本当に書く必要がありますか?
A. はい、とくに重要です。スマホがロックされたまま家族が中身を確認できないと、ネット銀行やサブスクの解約ができず、料金が引き落とされ続けることがあります。SNSも放置されがちです。アカウントの存在と「削除・追悼・残す」などの希望を書き残しておきましょう。
Q. 市販ノート・アプリ・自由なノート、どれがよいですか?
A. 続けやすいものが一番です。項目が用意されていて書きやすいのは市販ノートやアプリ、自由に書きたい方は手持ちのノートでも構いません。アプリは更新が手軽な一方、家族が中身を見られるよう存在と開き方を伝えておく必要があります。
Q. 書いた内容は変更できますか?
A. いつでも自由に変更できます。エンディングノートには決まった書式も法的な制約もないため、状況が変わるたびに書き直せます。口座やサービス、希望は時間とともに変わるので、年に1回など定期的な見直しをおすすめします。
まとめ|書ける項目から、今日始めよう
エンディングノートは、基本情報・資産・不動産・デジタル・医療介護・葬儀お墓・連絡先とメッセージ・ペット・相続という分野ごとに項目を整理し、書きやすいところから埋めていけば、無理なく完成します。とくにスマホ・SNS・サブスクといったデジタル終活の項目は、家族のトラブルを防ぐために忘れず書き残してください。
そして、エンディングノートに法的効力はないという点を踏まえ、財産の分け方を確実に残したいことは遺言書で——と役割を分けて準備すれば、より安心です。まずは今日、基本情報や連絡先だけでも書いてみましょう。エンディングノートのほかの記事はエンディングノートカテゴリにまとめています。Death Tech Japanの運営方針についてはAboutもあわせてご覧ください。
