もしバナゲームとは|ルール・遊び方・入手方法を解説

「もしも、あなたの余命があと半年だとしたら——いちばん大切にしたいことは何ですか」。そう問われて、すぐに言葉にできる人は多くありません。けれど、35枚のカードを手に取り、選んで、語り合ううちに、自分でも気づかなかった本当の願いがふっと浮かび上がってくる。それが「もしバナゲーム」です。重い話題を、笑いながら、ときに涙ぐみながら、温かく語り合える不思議なカードゲーム。この記事では、もしバナゲームとは何か、ルールや遊び方、得られるもの、入手方法、そして家族や職場での活かし方まで、公式情報をもとに丁寧にご紹介します。
もしバナゲームとは|人生の最期に大切にしたいことを話し合うカードゲーム

もしバナゲームは、「もしものための話し合い」を略した名前のとおり、人生の最期に自分が大切にしたいことを考え、話し合うためのカードゲームです。一般社団法人iACP(アイ・エーシーピー)が開発・出版しており、千葉県の亀田総合病院で緩和ケアや地域・在宅医療に携わってきた医師らが中心となって立ち上げた団体です。
1セットには36枚のカードが入っています。そのうち35枚には、重い病気のときや死を意識する場面で、人がよく口にする「大事なこと」が言葉として書かれています。たとえば「家族と一緒に過ごす」「痛みがない」「心の平穏」「ユーモアを保つ」といった、ケアの希望や価値観に関わる言葉たちです。残りの1枚は、何でも自由に書き込めるワイルドカードになっています。
このゲームの原型は、米国のCoda Allianceという団体が制作・販売する「GO WISH GAME(ゴー・ウィッシュ・ゲーム)」です。iACPはCoda Allianceの許可を得て、これを日本語に翻訳・制作・出版し、さらに日本語版独自のルールを加えました。海外で生まれた仕組みを、日本の文化や言葉に合わせて丁寧に育て直した——それが、いまのもしバナゲームです。
大切なのは、これが「正解を当てるゲーム」ではないということ。勝ち負けはありません。カードを通じて、自分の心の奥にある願いに気づき、それを言葉にして人と分かち合う。その体験そのものが、もしバナゲームのいちばんの価値です。
もしバナゲームの遊び方|カードを選んで理由を話す
もしバナゲームは、1人でも、2人でも、もっと大人数でも遊べる柔軟さが魅力です。公式には大きく分けて「ソリティア(1人用)」「ペアーズ(2人用)」「ヨシダルール(4人用)」の遊び方が用意されています。ここでは、もっとも盛り上がりやすく、入門にもおすすめの4人用「ヨシダルール」を中心にご紹介します。基本の流れは、カードを選ぶ→なぜ選んだのか理由を話す、というとてもシンプルなものです。
4人用「ヨシダルール」の手順
- カードを配り、場をつくる:各プレイヤーに手札を5枚ずつ配り、さらに場(テーブルの中央)に5枚を表向きで並べます。
- 時計回りに、必ず1枚交換する:順番を決めて時計回りに進めます。1巡目は、自分の手札のどれかと、場のカード1枚を必ず交換します。手元の言葉より「こちらのほうが大切」と思えるカードを場から選びましょう。
- 2巡目からはパスもできる:2巡目以降は、交換せずにパスしてもかまいません。全員がパスをしたら、場のカードを新しいものに入れ替えます(場を流す)。
- 大切にしたい5枚に絞る:交換を重ね、最終的に手元に残った5枚が、いまの自分が「大切にしたい」と感じる言葉になります。そこからさらに、優先順位を3番まで決めます。
- 選んだ理由・捨てた理由を語り合う:それぞれが、なぜそのカードを選んだのか、なぜ手放したのかを発表します。この「語り合い」こそが、もしバナゲームの核心です。
- iACP公式サイト:開発元である一般社団法人iACP公式サイトから、ゲームの詳しい説明や取り扱いを確認できます。最新の遊び方や活動情報もこちらが確実です。
- 取り扱い販売店:介護・医療向けの専門ショップや、亀田総合病院内の売店などでも取り扱いがあります。
- オンライン通販:大手通販サイトでも「もしバナゲーム」の名称で取り扱われています。
1人で遊ぶ「ソリティア」では、ルールに従ってカードの中から大切な10枚を選び、その理由を自分の言葉で説明します。2人用の「ペアーズ」は、医療や介護の現場で、支援する人とされる人が向き合って気持ちを引き出すことを想定した遊び方です。どの遊び方でも、ねらいは同じ。選ぶ・手放す・理由を語るという行為を通じて、自分の価値観を見つめ直すことにあります。
所要時間の目安は、4人で30分〜1時間ほど。難しいルールはなく、進行役がいなくても始められます。最初は「正解を探さなくていい」「途中で気が変わってもいい」と伝え合っておくと、誰もが安心して本音を出せる場になります。
もしバナゲームで得られるもの|価値観の言語化とACPのきっかけ
たった35枚のカードを選ぶだけのゲームに、なぜこれほど多くの医療・介護の現場が注目するのでしょうか。それは、このゲームが「言葉にしにくいこと」を自然に言葉にしてくれるからです。
自分の価値観が「言葉」になる
「あなたが最期に大切にしたいことは?」と白紙で問われても、答えはなかなか出てきません。けれどカードという「選択肢」が目の前にあると、人は「これは違う」「これは外せない」と直感的に反応できます。選んで、手放して、優先順位をつける——その作業の中で、ぼんやりしていた自分の価値観が、はっきりとした言葉のかたちになっていきます。これがもしバナゲームの最大の効用です。
ACP(人生会議)への自然な入り口になる
ACP(アドバンス・ケア・プランニング、愛称「人生会議」)とは、もしものときに備えて、自分が望む医療やケアについて、家族や医療者とあらかじめ話し合っておく取り組みです。とはいえ、「さあ、死について話し合いましょう」と切り出すのは、誰にとってもハードルが高いもの。もしバナゲームは、この重いテーマを「ゲーム」という安心できる枠組みに包み込み、笑いや驚きを交えながら語り合える状態にしてくれます。気づけば、ふだんは口にしない希望や恐れを、自然と分かち合っている。だからこそ、ACPや人生会議の最初の一歩として、これ以上ない入り口になるのです。
ACP(人生会議)の考え方そのものについては、ACP(人生会議)に関する記事一覧でくわしく取り上げています。また、「ACP」「人生会議」「エンディングノート」がどう違うのかを整理したACP・人生会議・エンディングノートの違いもあわせてご覧ください。
他者の価値観に触れ、視野が広がる
同じカードでも、人によって選ぶ理由はまったく異なります。「家族のそばにいたい」を最優先する人もいれば、「人に迷惑をかけたくない」を選ぶ人もいる。語り合ううちに、「そういう考え方もあるのか」という発見が次々に生まれます。iACPも、さまざまな価値観に耳を傾ける体験が、人に視座の広がりとしなやかさをもたらすと述べています。自分とは違う最期の願いを知ることは、家族や大切な人を理解する手がかりにもなります。
もしバナゲームはどこで入手できる?|価格と購入方法
もしバナゲームは、iACPが翻訳・出版する公式製品です。1セットには36枚のカードと、遊び方を説明した解説書が付属します。価格は税抜2,000円(税込2,200円)が基準となっています(販売店によって価格が異なる場合があります)。
入手先は、おもに次のとおりです。
価格や在庫は時期によって変わることがあります。確実な最新情報は、必ずiACP公式サイトでご確認ください。
家族・職場でのもしバナゲーム活用法

もしバナゲームの魅力は、医療や介護の専門家でなくても、誰でもどこでも始められること。ここでは、家族と、そして職場やコミュニティでの活かし方をご紹介します。
家族で囲む|世代を越えた本音の時間
正月やお盆、家族が集まるタイミングは、もしバナゲームにぴったりの機会です。「縁起でもない」と敬遠されがちな最期の話も、カードゲームという形なら、ふしぎと和やかに進みます。親が何を大切に思っているのか、子は何を望むのか——ふだん面と向かっては言えないことを、ゲームの中でなら自然に伝え合えます。
ゲームで見えてきた価値観は、そのままエンディングノートに書き残しておくと、より確かな備えになります。書き方に迷ったら、エンディングノートの書き方・項目を参考にしてみてください。ゲームでの気づきを文字にしておくことで、もしものときに家族が迷わずにすみます。
職場・地域で開く|対話の文化を育てる
もしバナゲームは、医療・介護・福祉の現場で、スタッフ研修や患者・利用者との対話のツールとしても広く使われています。職場の同僚同士で遊べば、お互いの価値観を知り、チームの相互理解が深まります。地域の市民講座やサロンで開けば、世代を越えて「生き方・逝き方」を語り合う場になります。
iACPには、ゲームの場を上手にひらく担い手を育てる「もしバナマイスター」育成プログラムもあり、より本格的に活用したい人を後押ししています。一歩進んで地域や職場で広めたい場合は、こうした仕組みを活用するのも一つの方法です。
よくある質問(FAQ)
もしバナゲームは何人から遊べますか?
1人でも遊べます。1人用の「ソリティア」、2人用の「ペアーズ」、4人用の「ヨシダルール」が用意されており、もっと大人数で遊ぶこともできます。人数や目的に合わせて遊び方を選べるのが特徴です。
もしバナゲームに勝ち負けはありますか?
ありません。点数を競ったり勝者を決めたりするゲームではなく、カードを選んで理由を語り合うことで、自分の価値観に気づき、それを分かち合うことを目的としています。「正解」もないので、安心して本音を出せます。
カードには何枚、どんな言葉が書かれていますか?
1セットは36枚で、そのうち35枚に、重い病気のときや死を意識する場面で人がよく口にする「大事なこと」が書かれています。残り1枚は自由に書き込めるワイルドカードです。ケアの希望や、そばにいてほしい人、自分にとって大切なことなどが言葉になっています。
もしバナゲームの原型は何ですか?
米国のCoda Allianceが制作・販売するカードゲーム「GO WISH GAME」が原型です。一般社団法人iACPがCoda Allianceの許可を得て日本語に翻訳・出版し、日本語版独自のルールを加えたものが、もしバナゲームです。
ACP(人生会議)とは違うものですか?
もしバナゲームは、ACP(人生会議)を始めるための「きっかけ」となるツールです。ACPは、もしものときの医療やケアの希望を家族や医療者と話し合っておく取り組みそのものを指します。両者の違いはACP・人生会議・エンディングノートの違いでくわしく解説しています。
どこで購入できますか?価格はいくらですか?
iACP公式サイトや取り扱い販売店、オンライン通販で入手できます。価格は税抜2,000円(税込2,200円)が基準です。最新の価格・在庫はiACP公式サイトでご確認ください。
おわりに|カードから始まる、大切な対話
もしバナゲームは、死をこわいものとしてではなく、「いまをどう大切に生きるか」を考えるきっかけとして差し出してくれます。35枚のカードを選び、語り合う時間は、自分自身を知り、家族や仲間と心を通わせる、かけがえのないひとときです。重いテーマだからこそ、笑いながら、肩の力を抜いて始めてみてください。その一手が、あなたとあなたの大切な人の「もしも」を、きっと優しく支えてくれます。
Death Tech Japanについては運営者情報(About)をご覧ください。
