インタビュー

墓じまいで悩む人が、家系図をつくる理由

墓じまいで悩む人が、家系図をつくる理由

「家系図って最近よく聞くけど、何のためにつくるんだろう?」

そう思ったことはありませんか。

自分の命のルーツを辿り、記録に残す。大切なことだと感じても、いざ自分がつくるとなると「まだいいかな」と思う方も多いかもしれません。

家系図をつくるきっかけとしてよく聞かれるのは、終活や相続、親御さんへの贈り物、自分のルーツを知りたいといったものです。

ところが、意外なところから家系図をつくる人たちがいます。

「墓じまい」や「実家のお墓、これからどうする?」という問題に直面した人たちです。

「家系図をつくり、事実確認をするだけでなく、家系図から自分の家系と自分を見つめ直すことで、お墓問題への答えが見えてくることがあります」

こう語るのは、お墓にまつわる相談と家系図の紐解きを提供している、コトノハ合同会社代表の國場美乃(こくば みの)さん。

なぜ、お墓の問題から家系図へとつながるのでしょうか。

また、家系図の紐解きとはどのようなものなのか。

國場さんへのインタビューを通して、家系図を紐解くことの意味を探ります。

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方法はわかる。でも決められない

國場さんのもとには、「実家のお墓が遠方にあり、自分の子どもは娘だけ。今後どうすればいいのか」「自分がお墓を守っているけれど、子どもがいないので、この先どうするか考えている」といった相談が寄せられます。

墓じまいを検討する人の多くは、すでにインターネットで方法を調べたり、霊園やお寺に相談したりしています。そのため、墓じまいの大まかな流れや必要な手続きについては理解していることも少なくありません。

それでも、答えが出ない。

「そもそも、うちは墓じまいをしていいのだろうか」

「するとしたら、いつがいいのだろう」

「自分の代で決めてしまっていいのだろうか」

悩んでいるのは、墓石をどう撤去するか、遺骨をどこへ移すかという「方法」だけではないのです。

「なぜか長男ではなく、次男の自分がお墓を守っている」という相談もあります。

「なぜその人がお墓を守ることになったのかも、家系図を紐解いていくと背景が見えてくることがあります」

國場さんはそう言います。

その紐解きを担うのは、國場さんとともにこの活動を行う武居範導(たけい のりみち)さんです。

武居さんが家系図を紐解く下地には、日本で長く調査・研究されてきた「墓相」があります。武居さん自身も20代から墓相の調査・研究に携わり、全国各地のお墓と家系を見てきました。

今まで相談を受けてきた件数は、3万人、1万4千家系にのぼります。

数多くの家系を見ていく中で武居さんは、ある共通項に気づきました。

家系の中でどの順番で生まれたかによって、担う役割も違い、本人に強く影響する父方・母方の家系や先祖も異なる。そして、家系の中では、過去と似た出来事が形を変えて繰り返されることがある。それらを家系図上から読み解いていけるということです。

こうして長年の調査・研究と相談事例から体系化したものを「因縁学」と名付け、家系図から読み解いていくことを「家系図の紐解き」と呼んでいます。

最初は「自分には関係ない」と密かに抵抗

國場さんが家系図の紐解きに出会ったのは、2020年の12月、仕事としてです。

当時の武居さんは、因縁学をもっと子育て世代に伝えたいとの思いで、「楽しく・面白く学べる」をテーマに新しいコンテンツを開発しようとしていました。

そこでコンテンツの企画立案から執筆までを担当できる編集者として、そのプロジェクトに参画したのです。

最初は理解するところから。

書籍を読み、何時間にもわたって因縁学の解説を受け、質問を繰り返したそうです。

「最初に武居先生のお話を聞いたときから興味をそそられました。今まで、さまざまな個性診断を受けたり、心理学や算命学を学んだりしてきました。ですから、家系図から自分を紐解くことに関しても抵抗はありませんでした。むしろ、自分単体ではなく、命の流れの中で自分を見つめるという視点に魅力を感じました」

と話す國場さんですが、実は、かすかな抵抗感も覚えたそうです。

國場さんの家庭には、幼い頃から先祖を敬うことや輪廻などの考えがありました。一方、両親は故郷とのつながりを積極的には持たないように見えたといいます。

中学生の頃、あることをきっかけに、供養にまつわることが一気に家庭に入ってきました。当時、家族の中で最年少だった國場さんは、その変化に心が追いつかず、苦しんだ経験があったそうです。

「それが引き金になって、先祖や供養に関しては、むしろ積極的ではなかったですね」

そんな國場さんの心をほどいていったのが、因縁学を生き方として実践している武居さんの姿でした。

「人の良いところを伸ばそうとし、共創を楽しむ姿勢、どんなときでも縁を大切にする言動に心を打たれました。私だけでなく、周囲の人にも同じ接し方をされているのを見て、心が動きました。きっと、家系図を紐解くときも同じなんだろうと……。これなら、過去を、先祖を振り返ることも怖くないと思いました。誰しも『あれは自分が悪かった』『あれは認めたくない』と思うことの一つや二つはあるでしょう。でも、武居先生流の家系図の紐解きなら、それを光に変えることができるんじゃないか、と希望を持ちました」

500年前からの家系図が使えない?

そして、月日は流れ、2024年の元旦に國場さんの最愛の父が亡くなりました。

いろいろな行き違いで、父親とは5年間ほど言葉も交わさず、会わなかったそうですが、亡くなるひと月前に再会し和解することができました。

そしてやっと、國場さん自身も本気で家系図を紐解いてみたいと強く思ったそうです。

いざ、戸籍謄本を取り寄せてみると、母方は江戸時代末期まで辿れましたが、父方の國場家は沖縄。戸籍は戦火で祖父の代までしか残っていなかったそうです。

「私は離婚をして國場に戻っています。結婚した姓のままだったらそうは思わなかったのかもしれませんが、戸籍が祖父の代までしか残ってなくて悲しかったです。命をつないでくれた人たちがどこで生きていたか、足跡が追えない……。と切なくなりました」

実は、國場家には500年前からの家系図があります。しかし、紐解き用の家系図は一般的な家系図とは少し違うので、紐解きには使えませんでした。

紐解きでは、名前や続柄だけでなく、生まれ順や婚姻した日付など、家族同士の関係を読み取れる形に整理する必要があるのです。

二人姉妹の次女である國場さんは、初回では母方を中心に見てもらったそうです。そこで、母方の祖母からの流れに気づいたといいます。

「祖母は母が幼い頃に亡くなっているので、当然ですが会ったことがありません。ですが、祖母の話を10代のときに聞いてから、ずっと祖母の存在が気になっていました。祖母の境遇の影響を受けていると知ったときは、不思議ですが嬉しかったことを覚えています。そして、『あぁ、だからかぁ……』と納得もしました」

2回目の紐解きは國場家が中心でした。

「私は國場に戻っていますので國場家はやはり大事です。そして、命の流れ、家系の中の役目という観点から、自分の立ち位置がどう変化したのかを教えていただきました」

こうした紐解きを経て、國場さんに変化が起きたそうです。

「父のお墓は関東にあるのでお墓参りはしています。ですが沖縄にある國場家のお墓について、今まで何の関与もしてこなかったのですが、やっとお墓参りから始めよう、と思うようになりました」

今年、2026年の4月、何十年ぶりに沖縄のお墓参りに行き、叔父と従兄弟にも再会。懐かしさと嬉しさもひとしおだったそうです。

「私は武居先生と出会って、最初に理論を学び、数年かけて変化をしてきたという歩みの遅さですが、それでも家系図の紐解きに出会って本当によかったと感じています。私の中に、少しずつ先祖とのつながりの根が育ち、『家系の中の私』『命の流れの中の私』がいるんだ、という感覚が生まれました」

お墓は「家の根っこ」

では、家系図とお墓にはどのような関係があるのでしょうか。

「私たちは、お墓を『家の根っこ』と表現します。私は、この言葉がとてもわかりやすいかなと感じています」

お墓には、その家に生きた人たちが眠っています。そして、今を生きる私たちが先祖に手を合わせる場所でもあります。

一方、家系図を広げると、その一人ひとりから命がつながり、今の自分がいることが目に見える形で現れます。

「家系図が命のつながりを見えるようにする地図だとしたら、お墓は、そのつながりを感じられる場所の一つなのだと思います。だから、お墓をどうするかという問題は、墓石や遺骨だけの問題ではないと思っています」

と國場さんは言います。

実際、墓じまいの相談には、さまざまな家族の事情が隠れていて、一つひとつの家に、それぞれの歴史があります。

だから國場さんは、「墓じまいをしたい」という相談を、そのまま墓じまいの方法論にはつなげません。

「まずは、何に困っているのかをお聞きしています。お墓が遠いことなのか、継ぐ人がいないことなのか、家族に負担をかけたくないのか。それとも、どう考えたらいいのか判断基準がなくて困っているのか。そこを一緒に整理していきます」

そのうえで、必要であれば家系図をつくり、紐解いていきます。

「紐解いたからといって、『だから絶対にお墓を残しましょう』という話ではありません。各家系に事情がありますので、墓じまいという選択になることもあると思います。ただ、その前に、自分の家がどんなふうに続いてきて今の自分がいるのかを知ったうえで、お墓をどうするのか、何を次の世代に残すのかを考えてからでも遅くはないと思うのです」

一方で、「子どもに迷惑をかけたくない」と親だけで墓じまいを決めるケースについては、子ども自身の意思を確かめることも大切だと話します。親にとっては「負担を残さない」という愛情でも、子どもは「自分が守りたかった」と思っているかもしれません。

「お墓に限らず、終活や相続など、死にまつわることを家族で話すのは難しいものです。ましてや家族や親族で話し合おうとすると、それぞれの想いや感情もあります。でも、生きることと同じくらい、避けられない大事な話なのは確かです。困難で面倒だと思っても、気づいた人から、気になった人から一歩を踏み出すことが大事なんじゃないか、と。その一歩があるからこそ、家族との話し合いにつながり、最後は『良かったね』と言い合える答えを導き出せるんじゃないかと思います」

國場さん自身も、家系図をつくり、紐解いてもらったことで、お墓に対する考え方が変わった一人です。答えを押しつけられたのではなく、知ることで、自分なりの答えが変わっていった。だからこそ、相談者にも結論を急いでほしくないと言います。

「お墓のことって、何度も決め直すようなものではないですよね。だからこそ、わからないことや迷っていることを一つずつ整理して、必要なら専門家の力も借りながら、自分たちが納得できる答えを見つけてほしい。そのための伴走をするのが、私の役目だと思っていますし、お役に立てれば嬉しいです」

家系図は、過去を記録するためだけのものではありません。

自分がどこから来たのかを知り、今の自分を見つめ、これから何をつないでいくのかを考える。  

お墓の問題は、そのことに気づく一つのきっかけなのかもしれません。